川の字は、日本の育児文化

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戦後しばらくして、米国のスポック博士の育児書が日本に導入され、
欧米型の育児法がもてはやされた時代がありました。
その一つが「うつ伏せ寝」です。
昨今では「うつ伏せ寝」は
乳幼児突然死症候群(SIDS)の要因の一つであることが明らかにされ、
日本古来の育児法である「あお向け寝」の方が安全だとされています。
これは私たちにとって苦い体験です。

両親の間に乳飲み子を寝かせる姿、「川の字」の育児文化もまた、
日本古来のもので、家族としてのほのぼのとしたあたたかさを感じさせます。

ところが、米国小児科学会が2005年10月に発表した
乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防に関する見解では、
母親と同じベッド寝る「添い寝」がSIDSの危険性を高めるので、
子どもが寝入ると一人で寝かすことを勧めています。

この米国小児科学会の勧告は、従来の日本での伝統的な育児法とは
全く逆の見解で、正直なところ私自身、当惑しています。
日本と欧米では「ふとん文化」と「ベッド文化」の違いがあります。
ベッドの広さ、マットの硬さ、母親の喫煙、体格などが
SIDSのリスクに関係しています。
ふとんなら大丈夫という日本国内での研究成績はまだありませんが、
母乳栄養の確立には有利であり、
すぐに米国式の育児法に追従するのは如何なものかと思います。

また、米国小児科学会は、おしゃぶりが乳幼児突然死症候群(SIDS)の
予防に役立つという見解も発表しています。
その理由としては「寝具が顔を覆っても付属部分が鼻を塞ぐのを防いでくれる」「喉頭の神経系の発達を促す」などが考えられています。

私たち小児科医や小児歯科医は、これまでおしゃぶりは、
「母乳栄養確立の妨げになる」「不潔である」
「長期にやめられなくなり、歯のかみ合わせが悪くなる」などを理由に、
できるだけ使わないほうがよいと指導してきました。

おしゃぶりを無心に吸っている乳児の姿を見ると、
何か哀れさを感じてしまうのは私だけでしょうか。
(2006.春)
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