母子の絆は母乳のフェロモンから

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生まれたてのウサギがうまく乳房を探し求められるのは、
母ウサギの乳腺で合成され、母乳中に放出される
「フェロモン」が役立っているからです。
ヒトの赤ちゃんも、生まれてすぐにお母さんの胸の上に寝かせると、
嗅覚と触覚を働かせ、乳首に向かって自ら進み、
上手に乳首を探し当てることができます。

脳科学の進歩により、嗅覚のメカニズムが次々と解明されてきました。
においの元となる化学物質(におい分子)が
鼻の嗅上皮にある嗅細胞にとらえられると、
ニューロンを介して脳に伝えられ、においとして知覚されます。
嗅上皮には、嗅覚受容体のある嗅覚器官に加え、
フェロモン受容体をもつ鋤鼻(じょび)器官があります。

これまで、本能的な行動を引き起こす物質「フェロモン」の受容体は、
昆虫類だけにあると思われていました。
しかし最近では、哺乳類にもフェロモン受容体があり、
ヒトの嗅上皮にもフェロモン受容体である鋤鼻器官が
痕跡程度ですが、認められています。

驚くことに赤ちゃんは、同じ母乳のにおいでも、
自分の母親のものか、他人のものかを区別できるようです。
それを証明するような実験があります。
自分の母親の母乳と他人の母親の母乳を、
それぞれガーゼに浸みこませて、赤ちゃんの顔の左右に置きます。
すると赤ちゃんは、自分の母親の母乳が浸みこんだガーゼの方を向くのです。

ひとの体臭の違いには「フェロモン」が関係しており、
その違いは自己か非自己かを区別する
「HLA遺伝子」の違いによって決定されているそうです。
赤ちゃんは母乳中のフェロモンの違いから母親を認識できるようです。

また母乳のにおいは、新生児のストレス軽減にも役立つと言われています。
新生児の踵を採血のために穿刺するとき、母親の母乳を嗅がせておくと、
他人の母親の母乳よりもストレスを減らす効果を認めたとも言われています。

嗅覚は、五感の中で最も原始的な感覚ですが、
最も癒しに効果がある感覚でもあるのです。
(2008.冬)
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