大規模災害から子どもを守るには

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2002年秋、日本小児保健学会総会が神戸で開催されました。
テーマは「21世紀はこどもの世紀 – 社会で守る親と子どもたち」。
私は「大規模災害から子どもを守る」と題して
会頭講演を行うことになりました。

大規模災害で思い出すのは2011年、
ニューヨークで起きた「9.11テロ」。
2週間後に開始されたアメリカによるアフガニスタンへの報復戦争、
パレスチナをはじめ世界中で、戦闘が、
テロが、生物テロが起こりました。
大規模災害は何も震災だけではありません。

戦火の中、痩せ細ったからだに異様に輝く眼の子どもたち、
土煙りの中で乳飲み子を抱く母親。
大災害で被害を受けるのは決まって弱者。子どもと高齢者です。
食料の届かなかった震災直後にも安心して授乳できたのは母乳栄養児です。
きれいな水のないところでの人工乳調整は、極めて危険で、
下痢を起こして命を落とす原因となります。
発展途上国では「母乳推進運動」が積極的に行われており、
これは乳児にとって最大の危機管理と言えるでしょう。

阪神・淡路大震災時のように短期の食料不足では問題になりませんが、
いつ終息するか判らない戦争では救援活動にも限界があり、
子どもたちに栄養障害を、癒しがたい心の傷をもたらします。
阪神・淡路大震災では、
PTSD(心的外傷後ストレス障害)が注目を集めました。
成人では、①持続的な再体験、②回避や反応性の低下、
③覚醒レベルの上昇を示す症状などが 1カ月以上持続し、
日常生活の支障となる状態をPTSDと呼んでいます。

しかし、子どもの場合は成人と比べ、
心理的ストレスが精神症状として表れることは少なく、
むしろ身体症状や行動上の問題として表れやすいという特徴があります。
家族の心身状況や生活環境も子どもに様々な影響を与えることが
明らかとなりました。

9月9日は救急の日です。
いざという時に混乱しないように、
普段からの備えを怠らないようにしたいものです。
(2002.秋)
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